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TRUE REMEMBRANCE

【TRUE REMEMBRANCE】 推薦
■制作者/里見しば(ダウンロード
■容量/5.1MB

忘れたいほど悲しい「錆色の記憶」。その記憶を封印する「封士」である黒目の元に、ある日客として「ラ」という不思議な少女がやってきた。黒目はラの錆色の記憶を封印するために一緒に暮らし始めるが……。選択肢なし、ファンタジックで叙情的なデジタルノベル。

ここが○

ここが×

■「忘れる」ことの幸せと不幸

今回ご紹介は、超有名作「TRUE REMEMBRANCE」。何と言うかこの作品を私がここで紹介するのは、かなり「今更感」が漂いますが(笑)、それでも多くの方が味わうべき魅力がたくさん詰まった名作ですので、僭越ながらレビューを書かせていただきます。

この作品でまず目をひくのは……コミックメーカー製と言う事です(苦笑)。テキストが非常に上質なだけに、読み返し機能がないのは非常に痛いです。まあ一本道の選択肢なしノベルだけに、テキストのスキップ機能は要らないと思いますが……。それにつけても、コミックメーカー製であると言う事をこれほど「惜しい」と感じた作品ははじめてです。

ストーリーは全8章仕立て。かなりのボリュームがあり、じっくり読めば軽く3時間はかかるでしょう。文章は登場キャラの一人称で書かれているんですが、一人称の文章にも嫌味なところや読んでいて疲れるようなところは全くありません。そして章ごとに主体となるキャラは変わり、文章の語り手も変わるんですが、これがまた非常に効果的でした。登場するキャラクターは主人公黒目やラ、サブキャラクターのキョウやリップスなどなど、どのキャラクターも非常に魅力的。世界観はどちらかと言うと陰鬱ですが、文章をはじめとして独特の「暖かみ」を持っているため、陰鬱気味な世界観も気にならないと思います。

続いて目を見張らされたのはグラフィックス周りの丁寧さ。タイトルロゴや章間、オープニングやエンディングなど、地味ですが丁寧で非常にセンスを感じさせます。キャラの立ち絵も丁寧に描かれており、またイベントグラフィックスがとても綺麗。その上「ここぞ」と言う時にかなり上質なイベントグラフィックスが挿入されますんで、非常に効果的ですし読んでいる方も盛り上がります。本当に「これがNScripterか吉里吉里で作られていれば」、と何度も思いました(笑)。音楽も地味ながら、場面場面によくあっていたと思います。(10.5.7追記 現在では吉里吉里版が公開されています)

物語は、派手なところはあまりありません。しかし「悲しい記憶を、覚えておくことと忘れる事はどっちが不幸なのか」……。かなり考えさせられるところの多いテーマでした。作中で語られた黒目とマリアのエピソードなどは特に感動的です。ヒロインである「ラ」の名前の意味も、終わってみれば「ああなるほど」と思えます。ラストで語られる事実も、なかなか驚かされるものでした。

反面、起伏が派手なシナリオという訳ではありませんので、そう言ったドラマを求める向きには合わないかも知れませんが…。そして選択肢はありませんのでゲーム性は皆無です。恋愛周りの描写もちょっと弱いかな?などと…。全体に平坦ですし、物語の雰囲気が雰囲気ですので、合わない人にはもしかしたら全然合わないかも知れません。中盤から終盤あたりも、読む人によってはだれてしまうかな、とも。

ですが、序盤で気に入ったら間違いなく最後まで気に入ると思います。途中で「とんでもなく鬱な終わり方になるんじゃなかろうか」とびくびくしてた(笑)んですが、しっかりとハッピーエンドになって安心しました。

ともかく、ツールの操作性の悪さはおいておきまして(笑)、読んでみる価値が十分にある優れた物語です。休日の昼下がり、おいしいコーヒーでも飲みながらじっくりプレイしてみてください。

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