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プリムラ

【プリムラ】 ■制作者/巡遠(公開終了)
■容量/7.5MB

雪の中、行き倒れていた柴犬。彼を拾った女性、牧村こはる。こはるは彼を飼う事に決め、「シャーロット」と名付ける。2人の楽しい生活が始まるが、ある日シャーロットは、こはるも驚くような事をしでかす。マルチエンドの大長編ノベル。

ここが○

ここが×

■我が輩は、ちょっと変わった犬である

今回ご紹介は「プリムラ」。この作品のツールはあの悪名高き「恋愛シミュレーションツクール2」です。なので上の「ここが×」には特に書いてませんが、システム周りは最悪ですので最初に書いておきます(笑)。

さてこの作品は、何と主人公が犬という非常に珍しいノベルゲームです。犬の目から人間の色々な面が語られており、これはなかなか面白い視線で、小説ならともかくフリーのノベルゲームとしては、かなり新鮮でした。

今作は、3本のマルチシナリオとなっています。個人的には、最初に読んだ蓮のシナリオが一番気に入りました。このシナリオは、独特の言い回しなども凄くハマっていて効果的ですし、シナリオの盛り上がり具合もとても良かったと思います。特に自己紹介の時の蓮の言い回し(「私、この名前気に入ってます。蓮って呼んでください」)や、「初めて合う時の挨拶ははじめまして。2回目からは友達です」などを読んだ時は、「いい台詞だなー」と感心しました。この蓮シナリオが一番見事にまとまっていて楽しめたように思います。

公太シナリオは、小さなエピソード(団子屋の兄貴の話とか……)には唸らされる点もありましたが、途中から突然視点が変わり、いつの間にか終わってしまった感じ。公太自身、蓮シナリオでなかなか魅力的に描かれていたので、少し残念です。そしてこあきシナリオ。ちょっとギャグが暴走しすぎてキャラを殺してしまっている感がありました。画面効果見る度に「またですか……」とため息をついてしまいました(苦笑)。ギャグの全部が全部そうと言う訳じゃなく、「ソニックブラストマン」ネタなどは、お腹を抱えて爆笑しましたので、もうちょっと使いどころをわきまえればもっと良かったのになあ、と。全体にはよくまとまっていたシナリオだけに、ちょっと残念でした。

とは言え、3本のシナリオとも十分に水準以上の出来で、特に蓮シナリオの出来は見事。かなりじーんと来させられる場面もありました。ここまでの3本なら、間違いなく「準推薦」以上を付けるだけの価値を持った作品です。実際、3本クリアした時点で、「この作品は、準推薦でレビュー書こう」と思ったんです。

なのに、何故書き上がったレビューは無印か?全ては「おまけシナリオ」にあります……。このおまけシナリオ。はっきりいって大大大蛇足。ブルックナーの交響曲8番聴いた後、アンコールにマーラーの3番が来たと言うか、フランス料理食べに行ったらデザートに満願全席が出て来たというか。もうとにかくめちゃくちゃ冗長。読んでて死ぬ程いらいらしました。

これ、半分と言わず3分の1くらいにできるんじゃないでしょうか?加えてこのおまけ、本編と異なりこはる視点なため、本編の良かった点の印象まで吹っ飛ぶ結果に。あの「ひとかた」も長かったですが、あれは目的がはっきりしてて、盛り上がりどころもあったから読めました。がこちらは、ただただ長い。しかもキャラ同士のやり取りで進行が停滞。これがまたかなりいらいら。

更に悪い事に、本編で明らかにならない謎があって、真実はこの長大なおまけを読まないと明かされないんです。途中で発狂しそうになりました(苦笑)。もう読み終えた時は心底ぐったりでした。作者さんには大変申し訳ないんですが、「蛇にゴジラの足をつけた」くらいの蛇足でした。

ちなみに、コンプリートまでのプレイ時間は8時間くらいでしたが、うち3時間半は恐らくおまけシナリオの時間だったと思います。既におまけのレベルを超えてます(苦笑)。やっぱり、本編で振ったネタはきちんと本編で解決させて欲しいです。本編では未解決のままでおまけで解決という、こう言う手法自体に首を傾げてしまいました。

しかし、メインのうち特に蓮シナリオは出色の出来映えで、小さなエピソードの描写なども実によくできています。この1本を読むためだけでもダウンロードの価値は十二分にあると思います。「全シナリオ制覇!」と意気込むより、まずはかるーく1本のシナリオを読むつもりでやってみてください。

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