地上の天使～瞬きの詩
■制作者／BRUEPIANO（ダウンロード）
■容量／30.3MB
幼い頃に母を亡くし、父は海外に単身赴任。一人暮らしの高校生である主人公はそれなりに楽しい毎日を送っていた。ある夏、学校からの帰り道に空から降って来たのは……雪？ そして真愛という名の１人の少女と出会う。マルチヒロインマルチエンドの感動系恋愛ノベルゲーム。
ここが○
- タイトルグラフィックス等、CGは高品質。作品全体の雰囲気がとても良い。
- マルチヒロインもの。ボリュームもなかなか盛りだくさん。
- イベント１枚絵の多さは圧巻。クリア後はアルバムモードもあり。
ここが×
- とにかくウェイトが多くてストレスが溜まる。
- メインヒロイン真愛は、トゥルーエンド以外は少々投げやりな作り。
- SEが鳴りっぱなしになる箇所あり。BGMも何故かえらく音量が小さい上、リピートしない。
■天使の羽根はあした色
正統派のマルチヒロイン・マルチエンドの恋愛ノベルのご紹介。このタイプ、ありがちな作品のようで、実は結構少ないみたいです。まあ考えてみれば、ヒロイン別のシナリオを用意するだけでも大変な手間がかかります。この作品のヒロインは全員で４人。フリーのノベルゲームで４人分のシナリオがあるってだけで、私などは拍手したくなります。ツールは最近大流行のLive Makerです。
さて、本作のヒロインについての詳細は、ネタバレになってしまうのであまり語れませんが、４人のヒロインは４人ともなかなか魅力的です。こう言ったタイプの恋愛ノベルゲームにありがちな、「過剰に媚びた感じ」がありません。……と思って作者さんのサイトを見てみたら、作者の方は女性のようです。なるほどと頷かされます。
で……いきなり気になった点を書いてしまいますが、この作品、とにかくウェイトが多いんです。画面のフェードイン、フェードアウトは言うに及ばず、選択肢が出る際も、まずゆっくりとメッセージウィンドウがフェードアウト、そして背景がゆっくりと暗くなっていき、おもむろに選択肢が現れます。それらの大量のウェイトは、全く飛ばす事ができません。複数回のプレイが前提のはずなのに、これは２回目以降のプレイで相当のストレスになりました。
これらのウェイトは、特に「ここは強調したい！」と言う箇所以外は、もっとすぱっとやった方が良かったように感じました。ストレスの元になるだけでなく、プレイのリズムまで損なってしまうのは惜しいところです。
更に言えば、ヒロイン真愛のテキスト表示速度が異常に遅い……。まあのんびりタイプのキャラですからそう言う雰囲気を出そうとしたのかも知れませんが、これもプレイヤーのストレスになるだけで逆効果のような……。大抵の人が、真愛の台詞になったらマウスボタンを連続クリックしてしまうのではないかと（苦笑）。加えて、SEが鳴りっぱなしになったり、ところどころ主人公の名前がデフォルトのものになっていたり、細かいミスがあるのもちょっと惜しまれます。
いきなり苦言からになってしまいましたが、もちろん良い点もたくさんあります。まずは１枚絵がやたら多いのが目を惹きます。ここぞと言うシーンでは、必ず１枚絵が出て来ます。その数たるや10枚や20枚じゃなく、数十枚はあるんじゃないでしょうか。クリア後はアルバムモードも出て来る親切設計。いやはや驚かされます。
上で「再プレイの際は相当ストレスが溜まる」とか書いておきながら、何だかんだで私はメインヒロイン真愛のトゥルーエンドを含む、全ヒロインを攻略した訳ですが（笑）、攻略はそう難しくありません。個人的にはみほシナリオが気に入りました。サブヒロインのシナリオは、どれもそう大きな展開はせず、「泣ける」といったタイプの話でもなく、ある意味王道で、もう一ひねり欲しい気がしなくもないですが、綺麗にまとまっています。
そしてメインとも言えるヒロインの真愛。メインなだけによくできていますが、個人的には、彼女のルートをもっと充実させて欲しかったかな、なんて思います。真愛ルートは良く出来た話なのですが、もっともっと時間をかけて描写して欲しかったなあ、と。「大きな風呂敷を広げたけど、入れる荷物が思いのほか小さかった」と言う印象。良い話なだけにちょっと惜しいなと感じました。
色々書きましたが、全体の水準は高いノベルゲームです。１回のプレイ時間は１時間半くらいといったところ。ウェイトの長さに目をつぶれる方なら、プレイしてみる価値があると思います。是非真愛トゥルーエンドまでたどり着いてみてください。