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手紙

【手紙】 準推薦
■制作者/P.o.l.c.(ダウンロード
■容量/3.9MB

渡辺貴宏は、徐々に都会生活に慣れ始めた大学生。ある日、ぼろぼろの手紙を発見する。差出人の名前もないその手紙で蘇る、幼い頃の記憶。手紙に導かれるように、貴宏は故郷へ向かう列車へと乗った。そこで経験する不思議な出来事。非常に地味だが味わい深いノベルゲーム。

ここが○

ここが×

■「頑張っちゃってる」キミが好きだ

今回ご紹介は、まずタイトルからして地味な作品。「手紙」です。今までご紹介した作品でタイトルが地味だったものというと、「或る夏の物語」「遠来」「逢い~愛」と言ったあたりでしょうか。それらと比べても今作は圧倒的に地味なタイトルです。こうまでタイトルが地味だと、逆に「どんな作品なんだ」とプレイ意欲をそそられて、Vectorでの印象的な紹介文に惹かれてダウンロードしてみました。

使用ツールはYuuki!Novel。更に、タイトル画面は、手描き風の恐ろしくショボいロゴ。このダブルパンチで、ひょっとして多くの人は無言でウィンドウを閉じてしまうかもしれません。まあまあ、そこを我慢してちょっとプレイしてみてください。プレイ時間はほんの30分ほどです。この作品も、私が好きな「見た目はショボいが、プレイしてみるとなかなか」な作品なのです。

あまりネタバレはしない方向で書きますが、取り扱っているネタ自体はありがちです。ありがちなんですが、見せ方がうまいですね。巧みな筆致がそれを大いに助けています。ところどころ、ちょっと捻り過ぎかなと言う箇所もありますが、ぎりぎりでしょう。冒頭の手紙などは、素直に良い文章だと感心しました。この手紙を用いた演出も、なかなか上々です。

そして、この手の「文章巧み系」の作品は、往々にして何だか哲学的でよく分からない事がテーマになったり、読んでも「??」となってしまうような難解な言い回しに耽ったりする傾向があるんですが、今作にはそれがありません。それどころか、語られているテーマは泥臭いほどに直球です。何たって、平たく言えば「お父さん、お母さんを大切に」ですから(笑)。これが、文章とうまく絡んで作品の効果をとても高めていると思います。ちなみに、途中で主人公がお母さんをおぶる場面で、私は石川啄木のとある詩を思い出しました。

こう言うテーマを語る場合、主人公が最初はどうしようもないほど嫌味ったらしかったり、皮肉屋だったりして、感情移入をわざと妨げているとしか思えない事が多いんですが、この作品の主人公は割と普通の人です。幼い頃の主人公も、登場シーンこそ憎たらしいクソガキですが(笑)、素直な少年です。なので、最後まで気持ちよく読む事ができました。

背景や音楽は全て素材ですが、写真は良い物を選んでいて雰囲気出てます。欲を言えば、もうちょっとシナリオ全体にボリュームがあれば、と思わなくもありません。ですが、作者さんの次回作が楽しみになる作品でした。

話題作、有名作だけがノベルゲームではありません。「見た目はショボいがプレイしてみるとなかなか」な作品探しは、明日も明後日も続きます(笑)。

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