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ごがつのそら。

【ごがつのそら。】 準推薦
■制作者/むきりょくかん(ダウンロード
■容量/46MB

社会人1年生の溝口春樹。5月になり、何事にも気力が沸かない無気力状態、いわゆる「五月病」に陥っていた。そんなある日、ふと立ち寄った神社から聴こえて来るピアノの音色。ピアノを弾いていたのは高校生の少女、神明みのり。その日から春樹とみのりの奇妙な交流がはじまる。ほのぼの恋愛風味ノベル。

ここが○

ここが×

■五月雨を 集めてはやし 最上川

制作者名こそ違いますが、「星のない空の下で。」を作られた作者さんがシナリオを担当した作品です。前作は推理ものだったんですが、今作は一本道の(選択肢はあるけど、内容には無関係の模様)恋愛ものになっています。この作品、もちろん良く出来た作品ではあるんですが、個人的にはちょっと評価に悩みました。前作が「探せば粗も出て来るが、光るものを持った魅力作」(そして、私はこっちのタイプの作品を好みます)だったのに対し、「全体によくまとまっているが、突き抜け切れていない惜しい佳作」なんです。

まず、ジャンル的には恋愛ものなんですが、恋愛に関する描写があまりに希薄。と言うか、ラスト近くまで私は「これが恋愛ものに発展するはずがない、一体どんなオチが付くんだ?」と思ったら、恋愛ものになってしまってびっくり仰天しましたから(苦笑)。要は、春樹とみのりの関係が恋愛へ発展していく点に説得力を著しく欠くのです。ラスト近くの流れはとてもよくできているのですが(あの辺りの展開は非常に好きです)、それまでに、恋愛の描写を著しく欠くため、せっかくの感動的なラストの印象が薄れてしまってるんです。実に惜しい。

それでいて、良く言えば淡々とした、悪く言えばだらだら気味の展開。シナリオも、とりたてて何か目的や方向性が提示される訳ではなく、ただ普通の毎日が流れるだけなので、人によっては途中で飽きてしまうでしょう。更にヒロインが「凄く魅力的」とはちょっと言い難い(暴力行為、嫌がらせ多数(笑))「いかにもゲームでございます」風なキャラなんです。

キャラが「いかにもゲームでございます」なのに、内容が淡々としているものだから、何と言うかキャラの言動に非常に「キャラとの乖離」を感じてしまったんですね。文章自体は、くどくもなく気取ったところがないのにびしっと決まった見事なものだけに、非常に惜しく感じてしまいました。この内容なら、キャラが本当に小説風の「普通の人」だったら、何倍も魅力的になったんじゃないかと思います。

それと、「五月晴れ」の事を「五月の晴れの日」と言う意味で使うのは、(日常会話ならともかく)「文章を読ませる」 ノベルゲームでは、非常にいただけません(特に「五月」が重要なテーマの作品ですし)。文章で表現するんですから、こう言った言葉は大切に扱っていただきたいです。「五月晴れ」や「五月雨」というのは、日本の風土と密接に結びついた言葉ですし(ま、今では辞書にも「五月晴れ」が「五月の晴れの日」の意味でも載ってますが)。文章がとても上手なため、あえてこの点を指摘させていただきます。

……と、難点の指摘ばかりになってしまって、全く申し訳ない(汗)。今作で何より目(耳?)を惹いたのは、音楽。ヒロインのみのりがピアノを弾くという設定になっているからか、ほとんどがピアノ曲で統一され、またその曲が雰囲気にぴったり合っています。みのりの立ち絵やイベントCGも、上手いアクセントになりゲームを盛り上げます。背景画像も綺麗で、加工具合も上々。そう言った面では、全体にかなりクオリティの高い作品となっています。

また、クリアしたらおまけシナリオが出て来るんですが、元々FLASHノベルだったため、既にプレイしていた方に対する本当の「おまけ」でしょうね。ちょっとした恋愛ものの後日談になっており、なかなか楽しめました。

なんか前半文句言いまくりですみません。全体の雰囲気はとても良い物をもった作品です。私はあれこれ言いましたが、こう言った恋愛ノベルもありかも知れません。間違いなくクオリティの高い作品ですので、序盤の展開に惹かれるものがあるなら、プレイする価値あり、です。

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