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スイーツ(笑笑

【スイーツ(笑笑】 ■制作者/KAS(ダウンロード
■容量/416KB

主人公はある日、思うところがあって外出する。当てもなく街をさまようと、あちこちで昔の友人に次々出会う。友人達は、主人公の様子がおかしい事に気付き、彼らなりに声をかけてくるが……。音もなく画面は終始モノクロだが、不思議な後味を持つ短編マルチエンドノベル。

ここが○

ここが×

■大切なのは未来、必要なのは過去

過去、容量1MBに満たない作品は2回ご紹介しました。「夏休みin宿題」と「」です。間が抜けている事に、どちらのレビューでも「これより小さい作品は出て来ないのではないか」と書いてしまっています。が、この作品の容量はたったの416KB。もちろん、過去最小の容量です。全く、うかつな事は書くものではないですね(汗)。時代が時代ですから、「416MB」でもおかしくないところですが、圧縮状態でNScr本体より小さいサイズというのが、まず凄いです。

この作品は、超短編マルチエンドノベルです。超短編マルチエンドというと「cubic 3」がありました。が、斬新な作りだったあちらに対し、こちらはノベルゲームとしての作りは至って直球。そのせいか、最初は同じエンディングばかり見る羽目になるかも知れません。ある程度慣れてしまえば、分岐条件の判別はそれほど難しくないと思いますが、既読スキップもないため、最初は同じ文章ばかり読まされて少々いらいらするかも知れません。

この作品は、大げさな起承転結はありません。作品紹介を書くのも苦労しましたが、主人公が街で旧友と出会って会話する、ただそれだけです。中には、どうでもいいような会話もありますが、はっとさせられるような台詞も多く、全編モノクロームの地味な見た目も相まって、独特の雰囲気を醸し出しています。副題にもした「大切なのは未来、必要なのは過去」という表現は、特に印象に残りました。そんな友人達との会話で、主人公が何かを掴む。一言で言えばそんな内容です。

そして、最初は何が何だか分からないとしか思えないのですが、エンディングを全て見ると、作品に込められたメッセージ性に思わず考えさせられます。もちろん、そのメッセージ性に共感するかどうかと言えば、それはまた別問題なのですが、エンディング1(グッドエンドに相当)などは、ラストの唐突とも言える展開が、最後まで読んだ一瞬後にほどけ、「ああなるほど」と唸らされました。

物語としてはとりたててドラマティックでもないですし、いわゆるハッピーエンドは存在しません。また、潔いくらいに飾りっけのない作品です(シナリオも、そして演出などの面においても)。しかしそれでいて過不足を感じず、また後味の悪さを感じなかったのは、メッセージ性を込めつつ、主人公に過剰に語らせなかった地味さが奏功しているのではないかと思いました。主人公が過剰に語らない分、脇役は存分に語ります。その語らせ方、バランスの取り方が良かったと感じましたね。

難点ですが、音楽や効果音がまるでありません。この作品の場合は、それはそれで一つの雰囲気作りとして成立していると言えなくもないですが、最初から最後まで全く無音というのは、やはりノベルゲームとして見たら少し寂しい気がしました。それと、タイトルの意味は一体? 色々深読みしてしまったんですが、よく分かりませんでした。

エンディングは全部で5種類。システムはNScripterですが、既読スキップがありません。プレイ時間は全部読んでも15~20分程度でしょう。マルチエンドノベルとしては、作りにもう一捻りが欲しかった気もしますが、「重苦しいのに、むしろさらっとしている」独特の雰囲気は、味わってみる価値があると思います。

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