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もえなつ

【もえなつ】 ■制作者/もえぼの(公開停止)
■容量/262MB

歩とここねの兄妹、それに幼なじみの七海は、いつも3人一緒だった。ある夏の日、ここねは山に登ってみたいと言い出す。渋る歩だったが、断りきれずに3人で山に登り始めた。そんな幼い頃の日が想い出に変わりつつある、数年後の夏に始まるほのぼの恋物語。

ここが○

ここが×

■この夏、想い出届けます

一時期「夏もの」ばかりが続いた事がありますが、この作品も、タイトルからして夏ものです。しかし、どちらかと言えば夏のもつノスタルジックな雰囲気よりは、開放感などがよく出ている作品で、雰囲気とすれば「僕と君の夏休み」に近いでしょうか。そう言えば、ヒロインの七海が、何となく「僕夏」の紗耶に似ている気もします。あそこまで暴力的ではありませんけど(笑)。

スタートすると、いきなり子供時代から始まります。子供時代の選択肢が、そのままシナリオ分岐に繋がるという、プレイヤーに優しい分岐システムです。ヒロインは、妹のここねと、幼なじみの七海の2人。キャラクターの性格付けとしては、はっきり描き分けられている感じで、掴みは良好です。

この作品、もの凄く美しいグラフィックスが目をひきます。元は同人誌即売会で販売していたそうで、それをフリー配布されたもののようですから、このクオリティにも納得ですが、特に色調が美しく、背景とのマッチングや、2人のヒロインの色の対比もよく考えてあります。オープニングムービーは歌つきで、立ち絵、1枚絵とも美麗です。夏を舞台とした作品らしく、水着やら浴衣やらのサービスショットにも、抜かりはありません。

さて、ヒロインは2人なんですが、恋愛ものとして見た場合、展開が少々似通っている感じなのが気になります。ここねと七海は、物語上の立場としては異なるはずなんですが、ヒロインと主人公の関係や距離感と言ったものが近いので、スタート地点こそ異なりますが、恋愛に至る展開が同じようになってしまっている感が否めません。ヒロインの性格付け自体は上手く行っていますので、主人公に対する立ち位置の違い、あるいは恋愛に至る経緯に、明確な差があれば、より良かった気がします。

それと、キャラクターが実質主人公以外はヒロインの2人だけなんですよね。中編と言えるくらいの長さですから、もう1人2人絡んでくるキャラがいれば、シナリオに厚みが出たんじゃないかと。なので、恋愛ものとしては、どうしても後半で駒が足りなくて、もう一盛り上がりが足りなくなってしまっているんですよね。ちょっと惜しまれます。

2人のヒロインについて、大雑把に。ここねは、「病弱な妹」キャラです。展開パターンとしては「Silence」とか「I'm」とかと近い感じですね。さらりとまとめてあるので、物語の厚みには欠ける反面、テーマから来るくどさを感じさせないのは良い点だと思います。病弱な設定をもうちょっと前面に出しても面白い気がしましたが。

七海は、「素直になれない幼なじみ」キャラです。上述の「僕と君の夏休み」の沙耶が代表格ですね。意外とフリーノベルで、この手のストレートなヒロインって少ない気もします。こちらも、味付けとしてはあっさり風味なので、こってりした恋愛ものがお好きだと、ちょっと食い足りない感じはあるかも知れません。割と早めに、七海の気持ちは明らかになるので、主人公側の心情の変化が、もう少し深く描写されていても良かったのかな、と思いました。

全体に、味わいとしては淡白なんですが、作りとしては丁寧かつ、綺麗なハッピーエンドで読後感も良いですし、万人に受け入れられやすいお話ではないかと思います。安心して楽しめる正統派のお話ですし、ヒロイン2人は文句なく可愛いですしね。子供時代を描いた作品は少なくないですが、子供時代にもきちんと立ち絵が用意されてるので、成長した時の立ち絵を見た時は「おお!」とちょっと感心しました。

システムは吉里吉里。プレイ時間は2時間半くらいでしょうか。なんだかんだで、この手のストレートで王道な恋愛ものを好んで読んでしまう私です(笑)。カレンダー消化型ではなく、イベントがテンポよく起こりますので、だれずに一気に読めます。長さもちょうど良いので、気軽に楽しめますし。季節外れではありますが、暑い夏に想いを馳せながらプレイしてみるのも、またおつなものかも知れません。(11.9.15追記/有料のバージョンアップ版製作につき、フリー版は公開停止の模様です)

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