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ミギヒダリ~輪の中の詩

【ミギヒダリ~輪の中の詩】 ■制作者/すたんど・あろーん(ダウンロード
■容量/138MB

真山啓太は、ある日秘かに心を寄せていた幼なじみの智夏に、友人の大介とみかが見ている中告白するが、振られてしまう。翌日から4人の関係がぎくしゃくするかと思いきや、大介達の気遣いもあって普段通りの日々が流れていた。まっすぐな作りが心地よい、フルボイスの恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■右手にゲンコツ、左手に花束

最近、新作ばかりを取り上げてきましたが、そろそろ「ちょっと古めの作品強化期間」に入りそうです(笑)。決して見た目が豪華という訳ではなく、作りも簡素なんですが、逆にそれが等身大の高校生活を描くという意味では、プラスに働いている気がします。今回取り上げる作品は、「ミギヒダリ」です。

この作品は、いわゆる典型的なカレンダー消化型の学園恋愛ノベルで、舞台は高校です。つまり、フリーノベルゲームでは一番多い舞台の作品です。この作品も、舞台は夏。多分、カレンダー消化型学園恋愛もので、季節別に分けたら、夏が一番多いのではないでしょうか(数えた事ないですが)。学園ものですが、ストーリーのほとんどは夏休み中なので、独特の雰囲気があります。

そしてこの手の作品は、デフォルメする方向へ行くか(「フラット」とか「かぐらかぐら」とか)、さりげない日常を重視する方向へ行くか(「Sing Song」とか「Beyond the summer」とか)、両極端という気がしますが、この作品はどちらかと言えば後者を目指した作品です。

しかし、この作品はデフォルメの掛け方に節度があって、非常に好感が持てます。過剰にデフォルメしすぎると、読んでいて途中で疲れてくるんですが、等身大というか、高校生らしい感じがしますし、4人のやり取りも気が利いています。全キャラフルボイスについては賛否が分かれるところでしょうが、私は高校生らしさと、良い意味での手作り感を感じさせてくれて、悪くないと思いました。そこらも含めて、高校生が作った自主映画っぽい良さがあるんですよ。高校生の自主制作なら、演技がプロっぽくなくても、それも含めて良さですよね。(ただし、全ボイスを残らず聴くのは、かなり根性がいりますが(笑))。

物語の語り方としては、巧みというよりはむしろ「若さ」を感じさせるんですが、それが逆にシナリオに勢いを与えていますし、物語全編に渡って、地に足がついた高校生のドラマを描き出す原動力になっている気がします。語り口、キャラクター、そして物語が上手くマッチした好例だと思います。

が、シナリオ自体についてという事になると、もう一歩踏み込んで欲しかった感じ。ヒロインは2人ですが、メインヒロインの智夏に関しては、タイトルにも出て来る「詩」を、もうちょっと物語に絡めたら、より面白くなった気がします。現状だと、あの要素はなくてもほとんど進行に影響ないですし。せっかくの良い材料を活かしきれてない感じがして、ちょっと惜しいですね。

またサブヒロインのみかについては、彼女の隠された想いみたいなものに対する描写がないため、ラスト近くの展開に、どうしても唐突感を感じるのは否定できません。みかシナリオ自体は、なかなかよく出来ているだけに、こちらもちょっと惜しまれます。

しかし、4人のキャラクターが織りなす何気ない日常は、テンポ感やキャラクターバランスも良好で、特に大介とみかが良いポジションで物語を支えています。デフォルメ型学園ノベルのように、過剰にキャラクターに依存していないんですが、それが逆にキャラクターによって物語を下支えさせる結果になっているのが、面白いところです。

ただ、1つ最も残念なのは、音楽があまりにも寂しすぎる点です。非常にシンプルな曲が2曲、それも時々流れるだけで、無音のシーンも非常に多いです。効果音はちゃんと入ってますし、エンディングでは歌まで入っているんですが……。定番の素材でもいいので、場面場面にあった曲がもっと入っていれば、かなり印象が違うはずなんですが。

とは言え、地味な見た目で通り過ぎるのはもったいないものを秘めた作品です。実は最後まで準推薦にしようかどうか迷いました。シナリオにもう一押しがあれば準推薦をつけていたと思います。システムはNScripter、プレイ時間は3時間くらい。エンディングは3つですが、選択肢がもの凄く少ないので難易度はゼロに等しいです。見た目の地味さから見落とし易い作品ですが、学園恋愛ものがお好きならお勧めです。

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