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罪~記憶のカケラ

【罪~記憶のカケラ】 ■制作者/VR Express(ダウンロード
■容量/262MB

桜木雅人は、ごく普通の高校生。のはずだったが、夏休みのある日、目を覚ますと年下の幼なじみ翠の姿が。どうやら夏休みの間、雅人の面倒を見るという事らしい。親友の和真をも巻き込んで、忘れられない夏の想い出が幕を開ける。演出に凝った、夏のドタバタ長編恋愛コメディ。

ここが○

ここが×

■夏と神社とお兄ちゃん

この作品をよくよく見てください。昔からのフリーノベルゲームファンなら、見覚えがありませんか? そう、「Silence」を、フリー向けに移植された方による作品なのです。この作品は言うまでもなく、完全オリジナル。凝った演出を見ると、かなり技術力のあるのが分かります。しかし、作品タイトルにも既視感。「イリュージョン~記憶のカケラ」と、サブタイトルが同じ。「カケラ」とカタカナにしているのも同じ。ちょっと驚きました。

さて、この作品はもの凄くよくある出だしです。夏休み、主人公を起こしに来る幼なじみ。定番の黄金パターンです。ああ、そう言えば私もそんな出だしの物語を書いた事ありますね(汗)。しかしこの作品は、独特の演出がかなり目をひきます。

というのも、キャラの拡大縮小、カットインを多用して、かなり動きのある演出を多用しているのです。カットインなんかは、ちょっと「星の降る丘」っぽいところも感じさせます。この動きのある演出が、キャラクターのアップテンポなやり取りに上手く乗って、非常に小気味良く楽しめます。

このキャラクターのやり取りは、漫才風のボケツッコミ連発ですので、人によってはちょっとくどく感じるかも知れません。一部演出過多と思えるところもありましたし。ま、しかしこの作品はこういうノリを楽しむものだと思えば、これはこれで一つの個性だと思います。私としては、ストレスを感じるほどではなく、その気になれば十分終始楽しめるレベルだと思います。

物語です。主人公である雅人は小学生の頃の記憶を失っていて、そんなある日神社で、これまた子供の頃の記憶を失っている奈菜という少女と出会います。そこからまたドタバタな日々がスタートしつつ、物語が少しずつ回り始めると、こういう展開。独特のボケツッコミと、時々入るシリアスモードで進む物語は、バランスがよく、上手い具合に「この先どうなるんだろう」という先への期待と、キャラのやり取りでの息抜きがブレンドされていると思います。

が、1本の物語として見ると、ちょっと組み方が大雑把な気がしなくもありません。主人公&奈菜の記憶とか、翠の気持ちとか、過去の問題がどうこうとか、とにかく「このキャラの組み合わせで、組み入れられる要素は全部入れてみました!」的な盛りだくさんな感じがあります。事実途中までは結構良い感じに進むんですが、後半からがなし崩し的に進んでしまって、一部の要素は置いてけぼり状態になってしまっています。鍋の容量を考えずに具を入れすぎで、一部煮込めてないところがあるのが気になりました。

オチの付け方としても、そこだけ見れば綺麗ではあるんですが、なんか色んな事がなかった事になったり解決してなかったりしてまして、「これで終っていいんですか!?」な気持ちに。ある意味、かなり展開に脈絡がないし(汗)。せめてハッピーエンドでは、主人公と和真の間に、けじめみたいなものが欲しかった気がします。

しかし、この作品はあくまで「キャラクターの掛け合いを楽しみつつ、ちょっと非日常な物語を味わおう」というのが主眼と思われますから、そう思えば思った以上に楽しめると思います。ちょっと日本語の間違いが多い(単純な誤用がほとんど)のが、少し気になりますが、そこもノリで読んでしまいましょう。むしろ、ごった煮すぎなシナリオを、キャラのやり取りで上手く読ませているところが、逆に上手いと思います。メインキャラはフルボイスですが、演技も上々で楽しめますよ。個人的には、和真の父、寛の演技がツボでした(笑)。

システムはADVRUN。この作品以外では「It's so flogging molly」しか使われてないかも(私のレビュー作の中では)。プレイ環境は快適ですが、テキストスキップを使っていると、時々「メモリが足りません」と言われて、止まります(readmeにも書いてます)。選択肢は多くはないですが、長い物語(4時間くらい)ですから、転ばぬ先のセーブをお勧めします。なお、攻略は難しくないですが、ハッピーエンドでなくても気付きにくいですから(スタッフロールも流れるし、1枚絵も全部回収できる)、ご注意あれ。

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