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ななこい

ななこい 推薦
■制作者/幻創映画館(ダウンロード
■容量/307MB

夏休み前の期末試験期間。晴季は通学中にトラックにはねられそうになったところを、同級生の少女雫に助けられた。彼女は驚く事に「魔法使い」だったのだ……。そして始まる雫との楽しい日々。読んだ人にも幸せの魔法をかけてくれる、極上の恋愛ドラマ。

ここが○

ここが×

■幸せの魔法は、いつまでも切れない

NaGISA netで今まで「推薦」作は27本出ています。が、直近の推薦作は自分が関わった「エイト・ストーリーズ」ですから、それを除くと、何と40作以上も「推薦」が出ていなかったのです。ですが、とうとう、そして久々に来ましたよ。「推薦」をつけるような作品は、読んでいるうちに「来たぞこれは」という気分の高揚感があるんですが、久しぶりにその感覚を味わいました。「ななこい」。タイトルだけだと見過ごしてしまいそうな作品です。

この作品は「明けない夜が来る前に」「EDELWEISS」の作者さんによるものです。前2作もよく出来ていましたが、この作品は「明けない夜が来る前に」を、更に深く深くしたような作品です。前2作は「良く出来てはいるんだけどなあ」という感じでしたが、今回は脱帽ものでした。

ななこい出だしは、遅刻しかけて通学路を走っている主人公が、無理に道路を横断しようとしてトラックにひかれかけたところ、ヒロインである雫が「魔法」で助けてくれるという、ちょっと変わったシーンから始まります。雫の魔法は、彼女が持っている「魔法の時計」によって発揮されるのです。で、雫とのちょっとした賭けに負けた主人公の晴季は、1週間雫の言う事を何でもきくことになり、かくて「試験期間なのに、毎日放課後遊び歩く」という、何だかよく分からない展開に(笑)。

実はこの辺りは、展開として色々あり得ない上に、何でもかんでも魔法で万能に解決できてしまっているので、いろいろと緊張感がないんですよね。ハルと雫の描写も、カスタードクリームにカルピスの原液を混ぜて、その上から練乳をぶっかけているような甘ったるさなので、中盤まではかなり「緩い」というのは否定しきれません。

ところが、後半から物語は急展開を見せます。実はこの物語は、おおまかな枠組みだけで言えば「とてもよくある物語」なんですよ。この作品において、「どういう物語か」を書いてしまうのは反則だと思うので書きませんが。しかしこの物語は、絶妙なミスディレクションによって「そういう物語である」という事を、ラスト近くまでプレイヤーに悟らせず、しかも物語として違和感なく組んでいるところがお見事です。だから、シーンそれだけをとればよくあるラストシーンなのですが、あれほどの感動を生むのだと思います。王道でも、組み方でこれほどの物語になるのです。感服しました。

後半、雫が「今の私はね……好きな人と一緒にいたい」というシーンがあります。これはもちろんラストへの伏線ですが、この台詞を言わせる状況、そしてこの台詞に持って行くそこまでの引っ張り方が素晴らしいです。この台詞だけを見ると、何て事のない一言ですが、ここで私は一気に「推薦来た!」と思ったほどです。

ただ、ヒロインである雫がハルに惹かれる過程が、もうちょっと描かれていたらなあと思いました。何せ出会った直後からいきなり変なニックネームで呼んじゃったりしてますからね(笑)。そして初日から傍目には恋人同士にしか見えない事をやってます。結局それが上にも書いた「中盤までの、胃にもたれるほどの緩さ」に繋がっている事も事実です。ここに一工夫が欲しかったように思います。

ラストは確かに悲しいのですが、同じ痛みを持つ桐羽さんとのあのシーンが、かすかな未来への希望を感じさせてくれます。もちろん、時計がそもそもどこから来たのかなど、作中では一切説明されていませんが、そんな事に言及するのは、あのラストを見た後ではもはや野暮というものでしょう。後半は、音楽の力も凄かったと思います。

そうそう、この作品はやっぱり(?)ワイド画面です。が、ワイドの意味がないですね(汗)。ウィンドウはワイドなのに、左右の視界が映画フィルム風の模様で削られているので、妙な圧迫感を感じます。「EDELWEISS」ではワイドを活かした演出もありましたが、これなら4:3の方が良かったような気がしますね。

とは言え、素晴らしい物語を堪能させていただいて、大満足でした。システムは吉里吉里。プレイ時間は4時間半くらいで、選択肢はありません。読んだ人にまで幸せの魔法をかけてしまう恋愛物語を、是非プレイしてみてください。

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