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リセレクト

リセレクト 準推薦
■制作者/幻創映画館(ダウンロード
■容量/126MB

クリスマスイブの夜、1人でとぼとぼと街を歩いていた遠夜義一の前に、1人の少女が現れた。彼女はいきなり主人公の事を「お父さん」と呼び、あまつさえ「人殺し」とまで叫ぶ。やがて明らかになる少女の正体。クリスマスイブのほんのり暖かい短編物語。

ここが○

ここが×

■約束のメリークリスマス

年は開けてしまいましたが、クリスマスものをもう1つご紹介。まあキリスト教暦ではまだクリスマスですから、いいでしょう(笑)。「ななこい」「明けない夜が来る前に」の作者さんの新作。そう言えば去年の元日の更新もこの作者さんでした。ワイド画面のフィルム風表示は変わらずです。この表示は、どうも左右の圧迫感を感じてしまうというのも変わらずですが。

今回はクリスマスイブの夜の物語です。イブ直前に失恋した主人公が、街を歩いていると突然見知らぬ少女に声をかけられ、という出だし。何か前2作と似たようなと言えば似たような感じです。そして今作を分類すれば、「別れを前提とした時限恋愛もの」。これも前2作と共通です。なので、「さすがにちょっとワンパターンじゃないか?」と思わなくもありません。一番最近で似たタイプの作品を挙げようとすると、まさに「ななこい」になってしまう辺りがなんとも(笑)。

リセレクトしかし、細かなところの料理法であれこれ小技を使っており、なかなか見せてくれる作品です。音楽や雪の演出などでクリスマスムードを高めてくれていますし、フルボイスのヒロインの声も上手くはまっています。ちょっとした小道具を最後に持って来る演出も、効いてますね。ヒロインのキャラクターパターンは、この作者さんとしては毎度おなじみという感じですが、こういうキャラが好きなのでしょうね。もっともそのおなじみのキャラ造形が、ワンパターン感を出しているという話もありますが……。

一方で、ちょっと説明不足なところがあるのも気になります。この作品を別の方向から分類すれば、いわゆる「タイムリープもの」「タイムパラドックスもの」になるかと思われますが、そういう観点からの説明はまったくありません。姫優が何故義一の時代に来たとかという理由には一切言及されていないので、ちょっと消化不良感が残るのは否定しきれないところです。そこは結構大事なポイントという気もするのですが。

あとは、主人公がいきなり将来ああいう事件を起こして、と言われても、上に書いたタイムリープの理由が描かれていないのと合わせて、それが現在の状況と繋がって来ないので、唐突感があるのも否めません。例えば「お母さん」も絡めて、そこらの事情を盛り込んで、尺をもう少し伸ばしてみたらその辺りがすっきりしたのかなあ、という気もします。

しかし、丁寧な演出と流れで、短編にも関わらず「お腹いっぱい」になれる作品です。終わり方も綺麗で読後感も良く、直前にご紹介した同じクリスマスものの「恋はある朝、悪魔ちゃんが!」で叩きのめされた方も、十分癒されるでしょう(笑)。意外と、クリスマスものでハッピーエンドの作品って多くない気がするので、貴重です。

あえて大事なポイントを説明せず、雰囲気で押し切るというのはこの作者さんの作風という気もしますが、「キャラクターを必要最小限に絞って、主人公とヒロインのみで物語を作る」というのも、この作者さんならではという感じです。そういう意味で、今作でも主人公とヒロインのやり取りが小気味よく、この作者さんの持ち味が上手く発揮された物語になっていると言えましょう。

ツールはYU-RISです。作者さんのサイトにはプレイ時間が150分と書いてありますが、そんなにかかりません。台詞をじっくり聞いても1時間、飛ばして読めば40分くらいじゃないでしょうか。選択肢はありません。雰囲気に浸りながら読んでみたい作品です。寒い季節のうちにどうぞ。

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