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Fizz

Fizz 準推薦
■制作者/六神合体(ダウンロード
■容量/35.6MB

時逆零は、ある日崖の上で幽霊の少女、幽と出会う。零は実は自殺するつもりだったが、幽はそれを止めに来たのだった。幽は自分の恩人に恩を返さないと成仏できないと言うが。上手い構成に感心させられる短編ノベル。

ここが○

ここが×

■人生攻略法教えます

いじめをテーマにしたり作品の要素として取り上げた作品と言うと、最近では「メモリア」「りんごが見た夕焼け」がありましたし、「そこに幸せある限り」を始めとして枚挙にいとまがないですが、この作品もそうです。しかしこの作品は、登場人物が(多少過激な手段も使いつつ)どんどんいじめを克服していく、という辺りが面白いです。

いじめをテーマにした作品というと、いじめシーンの描写がどうしても重苦しくて、読んでて辛くなる作品も多いんですが(当たり前ですけど)、この作品にはこういうシーンは全く登場しません。なので安心して読む事ができます。主人公である零の「いじめ論」に、もしかしたら異論を感じる人もいるかも知れませんが、作品内で彼の主張は綺麗に完結しているので、個人的には問題なかったと思います。

Fizzこの作品ですが、構成がちょっと変わっているというか、凝っています。冒頭では自殺を考えている主人公の零が、幽霊少女である幽に説得されて思いとどまらされるという展開で、「ほうほうなるほど。でもこの状態でこの先どう展開させるんだろう」と思っていたら、いきなりとんでもない展開に。

そのとんでもない展開で、「???」と思っていたら、それがラストで綺麗に繋がる、という構成です。なかなか上手く考えて作ってあるなと感心させられました。「???」状態で後半まで読まされるんですが、どんどん物語が進むため、読み手は展開の唐突さを忘れてしまいます。そして忘れた頃にラストが来るため、大変効果的でした。

ただ、文章自体はよく書けているんですが「ギーク」とか「ジョックス」とか「ナード」とか、知らない人にはまったく分からない単語が多くて、人によっては「??」となるかも知れません(私も最初は全然分からなかった。文脈から何となく意味は想像できたけど、結局検索で調べてしまった)。そこは何らかのフォローは欲しかったような気もします。

この作者さんは「memorieZ」や「KEY*」を作られた方です。文章の切れが良く、展開のテンポがもの凄く良いので、読んでいてストレスを感じません。テンポがいいんですが、変な「急ぎ過ぎ感」もなく、描写のボリュームと「端折り方」が適切ですね(こういうのが上手い人って、漫画畑の人に多い印象。文章畑の人って、どうしてもくどくなるんですよね)。ギャグ連発の会話は、もしかしたら人によってはくどく感じるかも知れませんが、それがこの作者さんの味ですからしょうがありません(笑)。

さて、上手い構成で落とし方も見事な作品ではあるんですが、ラストはとても有名なあの作品に、もの凄くそっくりなような……。ネタバレになるから作品名出せませんけど(笑)。そこにもう一工夫するか、あるいはもうちょっと先まで描いてみれば、「え、まんま○○じゃん」感はもっと薄れたような気もします。

実際、ラストまでの上手い展開に比べると、終わり方がかなりいきなりなんですよね。せっかく構成の上手さでラストは「ああ、そういう事か」と感心させてくれるのですから、ラストにもう一押しして欲しかったですね。幽が幽霊になった事情は全然描写されませんし。ただ、主人公がきちんと問題解決に向けて動くところまで描写してくれたのは良かったと思います。

あと、毎度書きますがワイド画面にはほとんど意味がありません。ノベルゲームにワイドって、よっぽど特別な演出でもない限り絶対向いていないと思うんですが……(この作品も、ウィンドウサイズの割にフォントサイズが妙に小さくて読みにくいし)。商業作品ではワイドが流行なのかも知れませんが、ノベルゲームはあくまで文章を読ませるものなんですし、4:3のウィンドウサイズの方が機能的なんじゃないでしょうか。

ツールはLive Makerでプレイ時間は40分くらい。選択肢はありません。登場人物たちがボケツッコミを繰り広げる、独特の文章スタイルにさえ抵抗がなければ、問題なく楽しめますし、読後感も良好。40分でこういう構成は、なかなか思いつくものではないですね。お見事です。

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