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終末によせて

【終末によせて】 準推薦
■制作者/まつ(ダウンロード
■容量/8.9MB

2ヶ月前、世界の終わりが宣言された。そして終末まであと1週間と言う日。本を読みふける青年。放浪を続ける男。音楽室でピアノを弾く女性。町を彷徨う少女。彼らは一体どんな終末を迎えるのか。退廃的ながら暖かい雰囲気の、選択肢のないノベル。

ここが○

ここが×

■もしあと1週間で世界が終わるとしたら

基本的には私は「鬱ゲー」はあまり好きではないのですが(自分であんなのを作っておきながらよく言うよ(笑))、この作品は非常にその雰囲気に惹かれましたのでご紹介。今回は「終末によせて」です。

この作品は、選択肢が全くない一本道のノベルです。って最近そんなのばっかりだな(苦笑)。最近5回で選択肢のない一本道ノベルが4本ですか(笑)。まあ良い作品だからいいやって事で。さて、テーマがテーマだけに、非常に退廃的な雰囲気が漂うんですが、文体やキャラクターの言動がそうさせるのか、どこか暖かな雰囲気が漂います。既にご紹介の作品では「TRUE REMEMBRANCE」と近いものを感じました。文章も、最初はちょっとくどい感じがしたんですが、読むうちに引き込まれていく、レベルの高いテキストです。

また音楽がとてもよくできています。全てオリジナルのようなんですが、特にピアノの音色は心に沁み入りました。音楽が鳴っているシーンはそう多くないんですが、この作品に限ってはそれが逆に良い方向に働いたように思います。1曲1曲の持つ重みがそのせいで高まった、とでも言いますか。特にラスト近くの「Let it be」(偽物ですが(笑))が流れる辺りは、何でもない日常のシーンなのに胸を衝く感動がありました。

難点と言いますか……。設定周りに少々無理があると思います。まず基本の「何故あと1週間で世界が終わりを迎えるのか」が全く説明されていないため、特にラストは「は? これで終わりですか?」と一瞬呆然としてしまいました。まあ、世界が滅びる様を延々と描写されてもアレですが(笑)。そして、世界の終わりまであと1週間だと言うのに、電気や水道が来てるってのも、ちょっと説得力に欠けるような……。

あとは、頻繁すぎる視点変更もちょっと気になりました。もちろん、それはそれでお話としては効果的なのですが、もうちょっと上手い方法はなかったもんかな、と思います。演出やシステム関係はシンプルの極致。キャラの立ち絵はおろか効果音も皆無。派手なエフェクトも全く使用されていません。演出をもうちょっと凝れば、と思わなくもないんですが、このシンプルさが逆にこの作品の味なのかなとも思ったり。

プレイ時間は30分ほどですが、4人のキャラクターが別々に描かれ、やがて4人が交わって行く描写、構成には感心しました。4人のキャラクターの描き分けも上手いです。ただし設定からも分かるように、終わった後は鬱な気分になるかも知れません(苦笑)。ただ、描写がさっぱりしてるのでそれほど気にならないでしょう。

「そういや、最近感動してないなー」と言う方。30分ほどで味わえる感動がこの作品にありますよ。ぜひどうぞ。

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