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Serenade

【Serenade】 準推薦
■制作者/巡遠(ダウンロード
■容量/24.8MB

社会人になったばかりなのに不治の病に冒され、ホスピスに入院した園田。園田の担当になったのは、失敗ばかりで異動になった館林東子という、若い看護師だった。無愛想な東子に園田は一目惚れし、毎日アタックするが。ホスピスで繰り広げられる、2人の切ない恋物語。

ここが○

ここが×

■怖かったのなら、死なないでください

久々に登場の「病院もの」です。病院ものは定期的にプレイしていまして、なかなかの良作も多いです。物語を作りやすい舞台というせいもあるのでしょうか。この作品は「プリムラ」の作者さんによる作品です。

病院ものの中でも「不治の病もの」に分類される作品で、この作品で不治の病に冒されるのは、主人公です。雰囲気としては「透明な優しさ」に近いものがありますが、あちらの主人公はあくまで妹である凛でした。なのでプレイして受ける印象は、随分と異なります。それでも、闘病シーンがほとんど出てこないところなどは、近いものを感じさせます。

まず印象的なのは、舞台がほとんど病室という閉鎖空間だけなのに、意外なほど退屈を感じずに読めたという事です。これは、園田と東子のキャラクターの噛み合いが良かったせいでしょう。ヒロインである東子は無愛想で失敗ばかりの看護師という設定なんですが(そんなナースがいるのかどうかは別として(笑))、単に主人公園田の人生だけでなく、東子がナースとして成長する物語も同時に描いており、かつ恋愛物語もそこに入ってくる。その3本の柱が、上手に絡み合いつつ物語を支えていた事、そして園田と東子のやり取りの軽妙さが、退屈さを感じさせずに一気に読ませてしまった要因だと思います。

ただ、ちょっと気になったのは病院用語に一部違和感を感じた事です。「死亡確定」とか「隔離病棟」とかは、何とかならなかったんでしょうか(「不治の病」「ホスピス」でいいと思うんですが)。あと、先輩看護師には名前つけてあげてもいいんじゃないかな、とか(笑)。

劇中では闘病シーンなどはほとんどなく、終始園田と東子のやりとりで話は進みます。個人的には、少しは病室外でのやり取りもあればと思ったんですが。中盤で出てくる別の病室のおばさんとのやり取りとか、あるいは園田と東子が外出するシーンがあれば、終盤の感銘がより深まった気がしなくもありません。とは言え、最後まで病室で繰り広げられるところにこの物語の良さがある気もしますので、あれはあれでいいのかも知れませんね。

既に書いたように、設定それ自体はドラマティックでありますが、展開はさほどドラマティックではありません。むしろ物語は淡々と進んでいきます。にも関わらず、後半では結構感情を揺さぶるものがありました。キャラクターの感情の振幅に、プレイヤーを上手くシンクロさせる事に成功している点、そしてラストをむやみに引っ張らず、さらっと流して余韻を残した事が、上質なラストの感覚につながっていると思います。主人公園田が、過剰に諦めず、また過剰にわめきたてず、自分の死を絶妙な位置から一歩引いて見て、かつ目をそらさない、その描写が上手いなあと思いました。

しかし、後半(と言っていいのかどうか)の「あれ」はどうなんだろうと思いました。逆に、最初でもっと語る事を語って、ストレートに終わらせた方がかえって物語の充実度が上がったようにも思えるんですが。

それと、物語は園田視点と東子視点が交互に進みます。よくある視点変更は「いちいちちょっと前まで戻って、同じ出来事をわざわざ別の視点で描く」というものです。ジャンルによっては効果的ですが、たいていは冗長なだけで終わります。この作品は、ちょっと前まで戻ったりせず、テンポよく2人の視点が切り替わるので、効果的だと思いました。園田のキャラクターが、園田視点と東子視点でちょっと一貫しない感じもありましたが……。

プレイ時間は1時間少々というところ。選択肢はなく、システムはNScripter。数多く出ている病院ものの中でも、良作と言える作品だと思います。クリア後はやたらめったら多いおまけストーリー(その数なんと50。多すぎる(苦笑))が読めますので、当分楽しめるでしょう。

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