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ほしあい。

ほしあい。 ■制作者/Nix(ダウンロード
■容量/282MB

いわゆるニートの和彦は、ある朝テレビを見たあとふと外出する。しかし不良にカツアゲされてなけなしの2000円を奪われ、道端に転がる羽目に。誰も相手にしない和彦に、1人の少女が声をかけてきた。彼女はどこにでも行きたい場所に連れて行ってくれるというが。後半の展開に目が点になる青春ノベル。

ここが○

ここが×

■星の彼方の巡り逢い

ノベルゲームのタイトルって、平仮名4文字がやけに多いですね。この作品もそうですし、思いつくだけでも「ひとかた」「おにあい」「ほたこい」「もえなつ」「こいいろ」「ふかこい」「ななこい」……と、探せばまだまだありそうです。この作品のタイトルにはちゃんと意味がありますが、それは劇中で明らかになります。ちなみにこの作品は、主要キャラがフルボイスです。演技はまずまず好演と言える内容だと思います。

主人公は、数ヶ月引きこもり生活をしているニートの和彦。冒頭はぱっとしない和彦の描写で、「何だこりゃ?」と思ってしまいますが、そこへ「星の案内人」を名乗る星野逢が現れてから、物語は動き出します。逢は「あなたの行きたいところ、会いたい人、どんなところでもご案内します」と言い、和彦はいなくなった元彼女の晴香に会わせてくれと頼みます。

ほしあい。本来なら、なぜ和彦がニートになったのか、あるいはなぜ晴香が和彦の元から姿を消したのか、そういう視点から物語を描くものなのでしょうが、この作品は過去回想を元に物語を組み立てています。和彦と逢自体は、街中を適当に歩いている程度の描写しかないので、むしろ過去回想こそがメインとも言えましょう。

そしてこういう作りにした事で、「失われた青春の思い出」を鮮明に描き出すとともに、「現在の状況」に意識を向けさせない一種のミスリードを作り出しています。そうしておいた上で、中盤からの急展開で一気につかんで、ラストにプレイヤーの意識に爆弾を落とす。よく考えてある作りです。その過去回想も、青春恋愛ものとしてよく出来ている内容です。和彦と晴香がつき合うまでの流れも、笑いを交えつつシリアスな人間模様を描くという、なかなかできない事をやっています。

さて、過去回想は後半から、些細な行き違いからとんでもない事になります。これがちょっといきなりすぎというか、何の前振りもない上に、主人公自ら「空気」と呼んでいたキャラがいきなり絡んでくるので、えらく唐突に感じます。その時明らかになった事実や、何故か委員長に噛み付いてくるというのも、どうも取ってつけた感が拭えません。そこらを含めて竜也をもうちょっと上手く前半から使えなかったものかなあと感じました。

この後半部分は、ちょっと精神的にも来るものがある展開なので、鬱展開が苦手な人は少々きついかも知れません。付け加えて、ラストに来るオチがまた……。巧みにプレイヤーの盲点をついて、意表を突いて来たという点では「お見事!」ではあるのですが、とにかく過去回想の後半の転落ぶりとも合わせて、まったく救いようのないオチに、人によっては頭を抱えてしまうかも知れません。

そのラストに更に追い打ちをかけるかのように、おまけの後味の悪さが止めを刺します(汗)。せめて、おまけで幸せなifストーリーとか、肩の力を抜ける裏話でも読めれば、いくらか読後感が違ったんでしょうが……。なので「ハッピーエンドじゃないと具合が悪くなる」というような方には、ちょっとお勧めしかねる内容です。

しかし、一部のキャラクターの扱いが中途半端なのはともかく、キャラクター描写はよく出来ていますし、過去回想シーンを中心に組み立てた構成も上手く、物語としてはよく出来ていると思います。一部の謎が置き去りになってしまっているのが気になりますが(せめて、和彦が部長と委員長につけたあだ名くらいは教えて欲しかった)、これは今作が別の作品の序章的な内容である事を考えれば、致し方ないでしょう。

ツールはNScripterです(それにしても、NScrの作品で文字速度を変えられない作品が実に多いなあ。スクリプトを1行書くだけなのに)。プレイ時間は1時間半くらいで選択肢はありません。後半は精神的にきつい展開ですし、鬱な終わり方ですが、読み手が自分で考えるタイプの作品がお好きな方なら、楽しめると思います。

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